彼の誕生日、何を贈ろうかずっと悩んでいた。
付き合ってまだ数ヶ月。重すぎず、でもちゃんと気持ちは伝えたい。
財布やキーケースも考えたけれど、なんとなく「彼が仕事をしている姿」が浮かんだ。
スーツを着て、真剣な表情で話すあの横顔。
その胸元に、さりげなく輝く何かを添えられたら――そう思った。
それから、夜な夜なネットで探し始めた。
検索結果に並ぶたくさんのアイテムの中で、ひとつだけ目が止まった。
派手すぎず、でもディテールにこだわりがあって、どこか彼らしい。
画面越しに見ただけなのに、「これだ」と思えた。
そして、裏側に小さく刻んでもらった。
“Always with you.”
彼の仕事を応援しながら、いつもそばにいるよ、という想いを込めて。
プレゼントが届いた日、小さな箱を手にしただけで心臓がドキドキした。
ブルーのリボンが特別に見えた。
渡す瞬間は、思っていた以上に緊張した。
手のひらの上で箱が少し震えている気がした。
「仕事で使うもののほうがいいかなって思って…」
そう言うので精一杯だった。
彼が箱を開けて、ネクタイピンを手に取った瞬間、
その目が少し丸くなり、そして優しく細められた。
「気づくかなって思って…内側だから、私とあなただけの秘密。」
そう伝えたとき、彼の頬が少し赤くなったのを覚えている。
次の日、そのネクタイピンをつけて出かけたと聞いて、
胸の奥がじんわりと温かくなった。
“使ってくれた”という事実が、何よりもうれしかった。
この先、忙しい日やうまくいかない日もあるかもしれない。
でもふと胸元に触れたとき、
その小さな輝きの中に込めた想いを、少しでも感じてくれたらいい。
“Always with you.”
それは私の中で、ただの刻印じゃない。
彼の背中をそっと押す、静かな約束のような言葉。
日々を大切に生きるすべての人の胸元に、ほんの少しの誇りと遊び心を。
あなたの想いを、胸元に添える一本に。