オフィスを出た瞬間、頬に当たる風が冷たくて、
ああ、冬だなと思った。
街はすっかりクリスマスの光に染まり、
イルミネーションが通りを照らしている。
今年は本当に忙しかった。
お互い、仕事の山を越える日々。
それでも「クリスマスだけは会おう」と決めた。
たった数時間でもいい、顔を見て言いたかったのだ。
――おつかれさま、と。
カフェの席に座り、手の中の白い箱を見つめる。
ブルーのリボンを選んだのは、
彼がいつも身につけているネクタイの色に似ていたから。
シルバーのネクタイピンを選んだのは、
どんな日も前を向く彼に似合うと思ったから。
ガラス越しに外を眺めていると、
人の波の向こうから彼が見えた。
少し息を切らして、それでも笑いながら手を振ってくる。
その姿を見た瞬間、心の奥がじんと温かくなった。
「メリークリスマス」
そう言って箱を渡すと、
彼は驚いたように笑って、
ゆっくりとリボンをほどいた。
街の光が、彼の胸元に留められたネクタイピンに反射して
ほんの一瞬、雪のようにきらめいた。
「あなたの頑張る姿、ちゃんと見てるから」
口にした瞬間、胸の奥が少し熱くなる。
彼が「ありがとう」と微笑んだとき、
街のざわめきが遠くに消えていくようだった。
――この夜の光も、この笑顔も、
ずっと忘れたくない。
忙しい日々の中で、
また明日から頑張れる理由を、
今日ここで受け取った気がした。